「将来の見通しが効き、事前に上手く立ち回って自分に有利な結果を得る。そんな能力があれば、苦労せずに仕事をこなすことができるのに・・・」
と、自分の不器用さに嘆くあなた。安心して下さい。
渡部昇一氏は「人生の手引書」で、器用さは必ずしも成功には結びつかないことを述べています。
渡部氏は上智大学の元教授で、英語学が専門です。しかし専門の枠を大きく超えて、歴史、哲学、宗教、人生論、蓄財まで、幅広い学問や知識を持ち、それぞれの分野で名著を著しています。
渡部氏は、器用か不器用かは、成功するかどうかにそれほど深く関係していないと断言しています。
成功の秘訣は「運・鈍・根」にあるということです。すなわち、「運」は運がよいこと、「鈍」は軽々しく動かないということ、「根」は根気よくやること。
渡部氏は自分の場合、「鈍」が強かったのではないかと分析しています。
楽しみにしていたアメリカに英語留学ができなかったときは悔しかったが、器用に立ち回ることができないから、「まあ、このまま頑張って勉強を続けるかな」ということぐらいしか考えつかなかったそうです。
しかし、「鈍」と構えていたことにより、結果としてドイツに留学する機会を得て、英語の元言語であるドイツ語を学ぶことができ、アメリカ留学に勝る勉強の機会を得ることができたということです。
このように、頭がよく、利巧に動き回れる人が成功するわけでないと実感していると述べています。
不器用な人は、先の見通しができない分、足元を見て一歩ずつ登っていくので、器用な人なら避けて通る険しく高い障害物があっても、いつの間にか乗り越えてしまいます。
そのような態度でいくつもの障害を乗り越えていくうちに、発想力や問題解決能力が身について実力が伸び、いずれは器用な人を追い抜いていくという結果になります。
自分の不器用さを見限らず、伸びしろがあると信じて継続的な努力をした人こそ、極上の達成感を味わうことができるのです。